ZTF彗星(C/2022 E3)を撮影したので紹介する。ZTF彗星は2023年1月13日に近日点を通過し、2023年2月2日には地球に最接近(地球から約4200万キロメートルまで接近)する予定である。1月30日前後に最も北極星に近づき一晩中観察が可能な状態(周極彗星)となるが、一方で1月末~2月前半の時期は月の出ている時間帯も長くなるため、新月の時期付近で天候の良かった1月20日を観測日として選んだ。
撮影地とアクセス
以下のマップに示す場所で撮影した。この場所は当日宿泊した施設の敷地内であり、当日の都合に合わせて選んだ場所である。八ヶ岳南麓の標高1,000m付近の林の中に位置しており、極軸合わせに参照する北極星が見えづらい場所もあるので注意が必要である。一方南西側は南アルプスの眺望が良い場所が多く星景撮影する場所としては適していると思われる。
この地域では、八ヶ岳南麓を走る県道609号線沿いやレインボーライン沿いでは田園の奥に八ヶ岳・南アルプス・富士山などの眺望がすばらしい場所が多くあるので、星空撮影する場合は日中に場所探しをしておくことをお勧めする。
撮影した写真の紹介
撮影地からの夜空の様子を図1に示す。2023/1/20の時点ではZTF彗星はおおぐま座・うしかい座・りゅう座の間に位置しているが、図1のように広角レンズ(フルサイズ換算15mm)では識別が困難である。また目視でも確認はできなかった。
図1赤点線枠で囲んだ箇所を焦点距離400mmで拡大した様子を図2に示す。また図2を切り取り拡大した様子を図3に示す。ZTF彗星のコマ、イオンテイル、ダストテイルが確認できる。コマは、彗星が太陽に近づくことで彗星の核から蒸発したガスや固体物質が放出されて核のまわりに広がって見える。コマの色は緑色であり、これは有機物由来の二原子炭素が太陽光によって破壊される際に放射される色である。
イオンテイルは、コマに含まれる電離したイオンが太陽風の磁場によって運動したものである。イオンは磁力線に沿って運動するため、幅は狭く直線的に伸びている。図2、図3でも画角端までイオンテイルがうっすらと伸びていることが確認できる。
ダストテイルは、彗星から放出された塵粒子が流出したものである。太陽光を散乱したものであるため全波長域の色(白色から黄色がかった色)を持つ。太陽風に流されるため太陽の反対側に広がっている。また、彗星の曲がったダストテイルと地球との位置関係で尾の一部が見える現象であるアンチテイルも確認できる。
撮影中、ZTF彗星のそばを流星が通過した様子を撮影できていたので図4に示す。フルサイズ換算30㎜の画角で撮影したものを100mm程度まで拡大してトリミングしたものである。
図5には日の出時に撮影地付近から南方向を撮影した様子を示す。南アルプス(図5左から鳳凰三山、北岳、甲斐駒ヶ岳)が一望できる。
まとめ
北杜市の八ヶ岳南麓にてZTF彗星(C/2022 E3)を撮影した。焦点距離400mmで撮影し、彗星のコマ・尾を確認することができた。撮影地は標高が高く一年を通して晴れが多い地域であり、八ヶ岳や南アルプスが眺望できる場所であるので星空撮影にお勧めの場所である。今回は星景写真は撮れていないが、再訪する際は星景写真も撮影したい。
なお上記で紹介したZTF彗星の写真は1/20に撮影したものである。彗星の位置と尾の形状は時刻によって変化する。下記サイトでも指定した日時におけるZTF彗星の見える方角や地平線からの高度を調べることが可能であるので、確認して撮影することが望ましい。Stellarium Web へのアクセスはこちら。Stellarium webの使い方はこちらのページでも紹介している。